● 秋の散歩

夜の気温が低くなったのか、
朝の散歩コースは、
朝露に濡れて光るようになった。

その分、
黄葉するのも早くなってきたようだ。
今年は、
黄(紅)葉が遅いのに雨が多い。

だから、
十分に黄葉しないで、落ち葉になってしまう。

雨上がりの翌朝。
夜の忘れ物が、しっとりと芝生を覆い、
朝陽で落ち葉が、黄金色に輝いている。

透き通った白い光は、
朝陽のレールにそって滑り降りてくる。
そして、
芝生の上に転がり落ちて、踊り始める。

あまりにも、
エキサイティングなことだから、
芝生は汗をかく。

それが、
ミルキィな水蒸気となって舞い上がる。

大地からの喜びを受けて、
陽炎のように、景色が踊り始めたとき、
風が調和をはこんでくる。

そして、
熟しきれない果実のように、
色の優しさだけが、瑞々しく残ってしまう。

だから、
木蔭にあるベンチは、遅い午後の光を、
待ち受けているようだ。

ワイカト・リバー沿いに降りていくと、
夏の名残りが聞こえてくることがある。

それは、
夏を惜しんでいるかのように、
細波の音を運んでは通り過ぎていく。

その時、
私たちは、水際の散歩コースで立ち止まっていた。
               
それからゆっくりと、通り過ぎていく夏の名残りに、
秋の挨拶を送り返す。



著者紹介
小林 純一(Jun Kobayashi)
1985年、衣・食・住のバランスの取れた生活を考え、街を離れて自然の豊かな所で暮らすことを計画し、編集社を退社。 衣・食はパートナーに任せ、住について技術を習得するためログハウスづくりに従事する。その後カナダの2人のトップビルダーの影響を受け、ログハウスづくりに専念し、建築士の資格を取得して建築デザイン事務所を設立。1995年からニュージーランドでの生活を始め、現在はbreeze & trees Ltdとしてエコ・プロダクトやキットセット・ハウス、建築資材などの輸出を手がけている。現在ハミルトンに在住。

website:www.breezeandtrees.co.nz

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