ニュージーランドの助産婦さんのコラム/助産師だより 〜命が生まれるそばで

● 赤ちゃんの笑い袋

産まれたての赤ちゃんも笑うことがあるが、これは俗に、新生児微笑と呼ばれる。
別に笑おうという意思のもと、笑っているわけではないのだが、時折ニッコリ笑う。
ニッコリというか、ニマッという感じ。

娘も、寝入りばなによくニマニマと笑って、私を幸せにしてくれた。
時々、肩を震わせて、腹の底から笑っているかのように笑う。
私の世代の人で、関西人で、吉本新喜劇をよく見ていた人なら、「木村進の笑い」と言えば、理解してくれるのではないだろうか。
まるで、体の中に笑い袋が仕込まれていて、それが作動している感じ。肩と体を大きく揺らし、クククといった感じで笑う。何がそんなにおかしいのだろう。何でそんなに私を幸せにしてくれるのだろう。
可愛い笑いに魅せられた大人が、はかない存在の赤ちゃんを慈しんで育ててくれるように、きっと神様が笑い袋を仕込んだのだと思う。

娘は3ヶ月くらいからよく笑うようになり、6ヶ月の今は声を立てて本当によく笑う。
自分の意思があり、面白いと思ったことで笑っているようだ。つぼにはまるとヒーヒーと笑い続ける。
自力の笑いが増えるにつれ、笑い袋が起こす「木村進の笑い」は見れなくなってしまった。
とっても残念な反面、これが成長・発達というものか、と、感慨深くなる。

 

神様がくれた笑い袋はどこにいってしまったのだろう。それとも体の片隅にまだ残ってるのだろうか。もしかして、私の中にも、笑い袋が残ってるのかもしれない。忘れているだけなのかも。人間にとって大切な「笑い」は、生まれた時から授けられていたのかも知れないと思う。

子どもができて、また大切なことをひとつ教えてもらった。
ありがとう。お母さんも神様に笑い袋もらってたんだね。
これからも一緒に笑って暮らそうね。


著者紹介
金 美江(キム ミガン、Kim Migang)
看護師、助産師、心理相談員。大阪大学医療技術短期大学部看護学科卒、大阪府立助産婦学院卒。日本で助産師として7年、看護師として1年勤務する。病院での勤務助産師として、若年妊娠者のケア・性教育、流産・死産・SIDSで赤ちゃんを亡くされた両親のケアに力を入れてきた。
2003年12月、NZでMidwife として登録。Staff Midwife として病院に勤務。Birth Educator として、日本語での出産前クラスも開催している。

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