●「ニュージーランドで一番おいしいパイ」の店 by. 川流あひる



日本ではあまり食べなかったのに、ニュージーランドにきて病みつきになったもののひとつに「パイ」がある。
昼下がりのカフェで新聞をよみながらナイフとフォークで食べるパイ、...キャリアウーマンを気どって。
道を歩きながら、友人とかじるパイ。
寒い日に、あたたかい部屋の中で、雑誌を読みながら行儀悪く手づかみで食べるパイ。

あつあつのチーズがとろーっと出てくるミンスパイを、ハフハフいいながら食するとき、人生の幸福を感じる。
暖かいってシアワセ。
おいしいってシアワセ。

グルメパイと呼ばれる、甘くないパイの数々。
ミンス&チーズパイ、ステーキ&オニオンパイなどなど。
実に「ニュージーランドな」食べ物ではないか。

ここロトルアには、「ニュージーランドで一番おいしいパイ」を売る店があるのだ。

Bakel's Supereme Pie Award 2004で、金賞を受賞した「Gold Star Bakery」である。
200以上のベーカリーが出場し、2000以上のパイがエントリーしたこの大会で、2003年に引き続いて、2年連続で栄えある金賞を受賞した店が、ロトルアにあるのだ。
パイ皮の質、パイの中身の味など9つのカデゴリーで審査され、2003年の金賞受賞「ミンス&チーズパイ」にひきつづき、2004年は「ベーコン・マッシュルーム&チーズパイ」での受賞。

カンボジア人のパトリック・ラムさんの経営するこのお店、一見どこにでもあるテイアウェイのベーカリー。
入り口にさがるビラビラのひも。コンクリート打ちっぱなしの店内。店内はそんなに広くなく、お世辞にもしゃれているとはいえない。店にはたくさんのサンドウィッチとパイが並ぶショーケースがあるのみ。

2年連続優勝したパイの店だから、立錐の余地もないほど混んでいるのかと思ったが、そうでもない。
しかし、次々とお客さんがとぎれることはない。
お客さんはみんな、この店のパイが今年も金賞に選ばれたことを知っていて、口々に「Well done!」「Counglaturations!」などと言いつつ、好みのパイやサンドイッチを買っていく。
常連さんの多い、地元の人に愛されている店なのだ。

私たちも「おめでとう!2年連続受賞は、すごいですね!」と、ベーコン・マッシュルーム&チーズパイ(1つ3ドルなり)を購入。店のアジア人女性は、「ありがとう」とすこし恥ずかしそうに笑った。

さて、今年の「ニュージーランドで一番おいしいパイ」、お味は?

まず、ひとくち食べて、パイ皮がサクっとやわらかいことに驚く。
ん?なんだ、なんだ?うまいぞ。
軽いのである。重くないのである。
口のなかに皮が張り付いたり、硬くて噛めない冷凍のパイとはまったく違う歯ざわり。
たっぷり詰まってる中身は、ベーコンとマッシュルームをホワイトソースで和えた感じ。
ベーコンの塩味がきいている。なんだかなつかしい味。洋食屋さんのクリームコロッケを思わせる。
熱いのチーズがとろりと舌にまとわりつく。
この中身だけ、ごはんに乗っけて食べてもうまいんじゃないかと思うのは、日本人ゆえか。
中身がたっぷり詰まっているので、これ1つで結構満足できる。
2つ食べれば、男性でもお腹いっぱいになるのではないか。
ビールを飲みながらも、いいかもしれない。

マオリ文化や温泉など、みどころも多く、アクテイビテイの宝庫でもあるロトルア住民の別の自慢。
「ロトルアではニュージーランドで一番おいしいパイが食べられるんです!」

Gold Star Bakery
1114 Haupapa Street(ツーリズムロトルアから徒歩1分。)
ph 07-347-9919

著者紹介

川流河童・あひる
1997年夫婦でニュージーランドに移住。97年から6年3ヶ月間、ロトルアで日本食レストランを経営。2004年レストランビジネスを譲渡し、留学サポート会社「Kickoff New Zealand」を設立。
ニュージーランド滞在中のケアを重視したいため、ロトルア周辺(ベイオブプレンテイ地方)に地域を限って留学サポートをおこなっている。
Kickoff New Zealandのサイトでは、「遠く離れた家族へ」の手紙の投稿を募集中。
また個人のニュージーランド生活情報サイト「New Zealandでどんじゃらほい」もロトルアより発信中。


このコラムへのご意見・ご感想をおまちしております。こちらまで>>