●数字のマジックを知ろう
不動産価格の上昇にまつわる新聞記事が相変わらずニュースに登場する。
日本のバブル崩壊を経験している私たちにとって、不動産とバブルはいつもつきまとう不安要因である。
ニュージーランドはバブル期なのかという質問に度々遭遇するのは宿命と納得しなければならない私は、観る人の主観によっては時にはバブルの扇動者であり、とんでもない悪徳ブローカーに仕立てられてしまうのである。
さて、現在のニュージーランド不動産はバブルなのか?
ある人から諭された。「優柔不断は良くない!」と・・・

では独断的な意見として、ここでハッキリと明言しよう。
ある地域(広域的な意)、エリア(狭い意)はバブルだ〜!!
と、言い放ってしまった方がスッキリする。


数字は万国共通「スクエアフィート表示?」

5月にサウスアイランドへ行った。地名は伏せておこう。
私はカルチャーショックを受けてしまった。少しくらいの過大広告は許容範囲と心得る度量は、広告の作り手である私は普通よりも深い。しかしながらオークランドの住人から観て、田舎としか表現できない過疎の土地(住宅地)がフィート表示になっていた広告を目撃した時、私は思わず声を発してしまった。
因みにスクエアフィート(sqft)からスクエアメーター(m2)に直に換算できる方は何人いらっしゃるだろうか?

因みに日本では土地のサイズを表す単位として、昔から坪や畳の枚数が使われている。そして坪表記は土地であれ、家屋の室内にも広く使われている。
さて、スクエアフィート・・・
私の持つ常識で言うなれば、アパートメントユニットやオフィスなど室内空間の面積を表記する際に用いられるものである。

では、そのスクエアフィートを土地に利用すると、どういう現象になるか・・・
表を参照して頂ければ一目瞭然、桁が増えるのだ。
丁度韓国へ行き、日本円から両替したウォン紙幣の札束の厚さに一瞬ドキッとする経験と同じような衝撃かもしれない。(頭の中で計算すれば納得するので衝撃は直ぐに収まる?)

広告を作ったブローカーにはどんな意図があったのだろうか。スクエアフィートで土地のサイズを表記しても誤りではない。従って、住む場所が違えば常識も違う典型パターンと認識するべきなのかもしれない。

周囲に何もない土地を見せられ、数字の桁数の大きい広告を見たら実際の土地の大きさはさておき、安いと錯覚する方も少なくないであろう。
担当者によるが、ブローカーに土地の境界線は何処かを聞いたとする。そしてそのブローカーが仮に何処から何処までと示したとしたら・・・


信じるものは救われる?


信じるのは自由だが、半値八掛け程度と心得ておかなければならないのがニュージーランドである。
何故ならば、不動産ブローカーは土地の測量士ではなく、それらの質問に対して、正確性を欠く恐れのある事項には答えてはならないことになっているからである。
従って、回答を避けるブローカーは本来の業務に忠実なのだ。

面積換算表
ヘクタール ha 1 1.25 1.5 1.75 2 2.25
エーカー ac 2.5 3.125 3.75 4.375 5 5.625
3,030.30 3,787.88 4,545.45 5,303.03 6,060.61 6,818.18
スクェアメーター m2 10,000 12,500 15,000 17,500 20,000 22,500
スクェアフィート sqft 107,639 134,549 161,459 188,369 215,278 242,188
ヘクタール ha 0.010 0.030 0.060 0.100 0.120 0.180
エーカー ac 0.025 0.075 0.150 0.250 0.300 0.450
30.3 90.9 181.8 303.0 363.6 545.5
スクェアメーター m2 100 300 600 1,000 1,200 1,800
スクェアフィート sqft 1,076 3,229 6,458 10,764 12,917 19,375


数字のマジックが招く誤解

「安物買いの銭失い」という格言が当てはまるのは不動産も同じではないだろうか。少しでも安い価格の物件はないか、少しでも土地の大きな家を買いたい等々、条件のよい物件探しに余念なく、週末届くプロパティプレスを隅から隅まで眺め、オープンホーム巡りを繰り返しながら、ニュースで流れる中間価格帯の価格ばかりを気にしていると大事な事に目が向けられなくなると私は思う。

とにかく安い!と思い契約したは良いが、契約した後にその物件は借地権の上に建てられた物件で、共益費、レイツの他に、借地料の出費が必要だと気が付く。挙句の果てにその借地権の期限は残りあと1年だとしたら・・・
べストロケーションでありながら、更新には莫大な費用が発生する、純粋投資として投資効果の一貫とした購入ならいざ知らず、一体何にお金を支払ったのか路頭に迷うことのないようにしたいものである。
Parnell, St Johns, CBDの特定物件(特にViaduct, Britomartエリア)が良い例である。 

賢い方は気がついて頂きたい。よくオークランドの不動産相場はいくら程度なのか・・・という質問を頂くのであるが、日本に置き換えて考えてみよう。
北海道から沖縄までの全体の数値を平均化したデータを基にして実際のマーケットを量って×である。
例えば東京を例にしても東京23区は広く、千代田、中央、港区と府中、多摩地区の路線価を足して平均したことろで意味があるだろうか。
無論、移民局が公表しているデータは決して誤りではない。しかしながら、あくまでも参考で留めておくべきなのだ。

一方で不動産の場合、土地や家の値段だけで量ってはならない理由の一つに各地のインフラ整備度も念頭に入れたいものであるが、残念ながらそういったデータを鑑みた資料の存在を私は知らない。よって数字だけの単純比較が犯しやすい要因はそういった点にもあるのだ。ニュージーランドには坪単価的なデータや路線価という杓子はない。

さて、数値やデータに偏り過ぎると方向性を見失ってしまう事もあるのがお判り頂けただろうか。


そんな事はどうでも良い? 
「私は家を買いたいが、こんなに価格が上昇してしまっては手も足もでない」と刹那的不満を抱く方も少なくないであろう。不動産= Real Estate リアルになれるか、アンリアリスティックで終わるかが幸運の分かれ目である。買わないで済むのならそれでも一つの選択。もうマイホームの夢は脳裏から消し去り人生を謳歌するものよいだろう。それでもどこかに忘れ去ることができないのなら・・・

「無理をしない、余力を必ず残す事」
これが私からのアドバイスです。
年金生活になった時にも引続き家賃を払い続けていたら、年金だけの収入ではこの国で食べていけない現状にも目を向けよう。


次回のテーマは「借金しよう!」 (予定)
29.07.2004 掲載

著者紹介
そといし やよい
(Koru World Services 代表 NZプロパティコンサルタント 兼 仲介ブローカー REINZ正会員)

現在、最もアクティブなNZプロパティコンサルタント
ニュージーランド不動産を日本語で分かりやすく解説したウェブサイト「ニュージーランド不動産A to Z」の筆者。
オークランドの大手デベロッパーであるトニーテイグループの日本マーケット代表を務める傍ら、一般の不動産売買を行う仲介ブローカーとして、業界最大シェアを誇るBarfoot & Thompson Ltd. で初の日本人セールス・コンサルタントでもある。
通常のブローカーは限られた地域に限定して活動するが、刻々と変わるオークランドの広域市場を常に把握するコンサルタントであり続ける為に、あえてエリアを限定しないという厳しい課題を自身に課している。
丁寧で納得のいく説明とアフターフォローは、買い手からも売り手からも好評であり、彼女を頼るキーウィのクライアントも急増中。信頼度と期待感は更に厚くなっている。

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