●高金利時代の不動産投資
 シティの需要と供給に焦点を置き、現在のマーケット及び今後の展開を
 想定しながら「元本保証型の不動産投資」を考察する

4. 家賃相場の推移

次のデータはCBDとGrafton地区の家賃相場の推移である。
NZでは賃貸借契約を締結した場合、頭金はボンドセンターへ預け入れる事が法律で定められている。このデータはテナンシーサービスに預託されたボンド保有件数の集計である。データは様々に読みとれるが、ユニットの絶対数増加に関して家賃相場に大きな変化はない。

家賃相場の推移表
エリア:  Auckland Central, City / Grafton
Data: Tenancy Services
部屋数 頭金預託件数 推移 平均家賃 最低家賃 中間家賃 最高家賃
1 1202   $324 $280 $315 $350
1163 -39 $318 $270 $300 $350
2 507   $437 $380 $420 $491
548 41 $439 $357 $400 $490
3 111   $517 $425 $485 $580
76 -35 $566 $390 $480 $605
上段:2003年11月1日〜2004年4月30日集計結果
下段:2004年4月1日〜9月30日集計結果

5. 供給増は競争を生みだしている。

ユニット増はテナントに選択肢を広げる結果となった。
シティアパートの増加は同時に世帯分布の変化を牽引している。シティの新しいアパートの殆どには最新式の白物家電が当たり前についているが、ロケーションだけでなく、他との差別化を図ったユニットには賃貸需要は強くなっている。逆に旧態依然のユニットはテナントが定着せず、家賃の値下げを余儀なくされる。もはや大家さんがあぐらをかいていられる時代ではなくなった。



NZ不動産は打ち出の小槌か?

キャピタルゲインは一先ずおいておくが、大事な事を忘れてはならない。不動産を取得したら、打ち出の小槌同様に自動的に収入が得られる訳はない。あたり前だが、インカム(家賃収入)はテナントがいて、家賃の支払いがキチンとされて生れるもの。つまりテナントがつけば万事安泰という方程式は必ずしも成立しない。釣った魚に餌は要らないと、テナントのアフターケアは勿論の事、物件のメンテナンス如何では状況が様変わりすることも念頭にいれたい。
またテナントがつかない、悪いテナントに遭遇するというリスクも忘れてはならない。
年間の稼働率を100%に近く維持する工夫とメンテナンスが安定した収益を得る鍵となる。
では次に需要に対して供給側はどう対応すれば稼働率を維持できるのかを考えよう。


1. ウィークリーマンション需要

先のデータからは読み取れないが、実はシティのレント人気には居住快適度に鍵がある。
極端に言えば、カバン一つでも即日生活がスタートできる空間に人気が集中している。
具体的な数値は公表されていないが、シティの賃貸需要層は1ヶ月から3ヶ月以内の短中期のビジターであると断言してよいだろう。ウィークリーマンションは、NZではサービスアパートメントと呼ばれており、週家賃には電気、水道代等が含まれた一括明瞭会計で日割単位あるいは週単位で契約が行える。しかしながらCBDにこのサービスアパートメント需要があるものの、供給量はごく少なく、これまでフラットメイトスタイルの「部屋貸し」がその供給を補っていたのだ。


2. 物件購入→マネジメントを依頼した→テナントがついた・・・万歳?
一般プロパティマネジメント(レンタルマネジャー)の短所

ウィークリーマンションのニーズがどんなに高くとも、その運営方式全てを一般の不動産代理店が執り行う事は実務上不可能なのである。
理由は単純、3ヶ月以上住めないテナントはテナントとして扱わないきらいがあるからだ。

投資目的として購入の相談をされる方に私は警告を発することがある。
プロパティマネジメント契約は各社によって若干の違いはあるものの、業務委託内容は至ってシンプル、単純に家賃の回収業務が主である。また万一、テナントとの紛争や責務不履行問題が発生した際には、別途対処が必要でありその際の費用の捻出は物件所有者に帰属する。 非居住者の大家さんも、ランドロードとして迅速な対応を求められた場合には「私は外国人で非居住者だ」という言い訳は通用しない。無論、不動産代理店のプロパティマネジャーがそれらを担当しない事もないが、特別事項の対応を含めて委託する場合には、それらの費用も考えておかなければならない。


3. これからの小口不動産投資はコマーシャル物件にシフトする?

ハード(アパートメント)があってもソフト(運営・管理)が伴わなければ物件は傷みインカムゲインは勿論、キャピタルゲインなど望める訳はない。
建築コストの高騰と地価の上昇により、CBDに限らずNZ不動産価格は下落期待があるものの、期待に反し下がる要因は少ない。

手ごろでハイリターンの不動産投資として、ステュディオユニットの支持は依然強いが、ハード、ソフト両方のバランスを考えると、これまでのワンパターン投資スタイルの方向性を変えていかなければならないであろう。独断的予測に過ぎないが、CBDの物件人気は商業物件に注目が集まるであろう。しかしながら商業物件の価格帯はレジデンシャルと比較すれば格段に高い。
ウィークリーマンションもサービスアパートメントも正しく、商業・ビジネス物件のカテゴリーに相当し、値段も通常のアパートメントと差異はない。


4. サファイア・アパートメントの成功例

大学、アオテアセンター至便のWakefield Streetにトニーテイグループ施工のアパートが今年7月竣工した。
そして試験的にいくつかのユニットを市場調査の一環として、投資家から借り上げ、長期滞在者に週単位で貸し出しているが当初の期待通り高い稼働率を維持している。(URL: http://www.sapphireapartment.co.nz
つまりこのサファイアは、ウィークリーマンション需要を満たすべく、最新の家電は勿論、インターネット常時接続、リネン、台所用品に至るまで揃っているので、プチ海外生活がカバン一つで実現できてしまうのだ。
現在の表面利回は9〜10%で推移しており、年間借り上げ方式、管理費用込みプランを採用した場合でも純利回り7%(確定)の提供を実現している。

投資家にとって家賃の滞納は勿論、テナントの心配がなく、オークランド滞在時には自己使用も可能。ロングステイには絶好の条件が整っている。


5. 高利回りの成功には理由がある

その答えは至って単純明快。一般の不動産代理店がタッチしない部分を取り込めることが可能だからなのだ。
アパートを施工、分譲販売しているトニーテイグループはデベロッパーでありながらもホテルを所有しており、ホテル運営を担当している会社が管理運営しているからだ。つまり、ホテルの延長線上でゲストをサービスアパートメントに誘導し、長期滞在客のニーズに応えているからだ。不動産代理店が取り扱う契約が一般の賃貸借契約が基本である反面、ホテル側のマネジメントはTenancy Actに拘束されることがない。従って、室内の管理も常時行え、レント代も一括前払いで確保することが出来、クレジットカードでのギャランティも取れる。万一、テナントの家賃不払いが生じてもトライビューナルの判断を待つことなく直ちに立ち退きを要求が可能となり、貸し手(投資家サイド)からは安心だ。
尚、本社には社内弁護士も常駐しており、テナントとの係争が生じても法的措置が迅速に行える故、係争を早期に解決できる体制も整っている。また、税務に明るい会計士も本社には常駐している。
<<戻る ・ 続きを読む>>
06.12.2004 掲載

著者紹介
そといし やよい
(Koru World Services 代表 NZプロパティコンサルタント 兼 仲介ブローカー REINZ正会員)

現在、最もアクティブなNZプロパティコンサルタント
ニュージーランド不動産を日本語で分かりやすく解説したウェブサイト「ニュージーランド不動産A to Z」の筆者。
オークランドの大手デベロッパーであるトニーテイグループの日本マーケット代表を務める傍ら、一般の不動産売買を行う仲介ブローカーとして、業界最大シェアを誇るBarfoot & Thompson Ltd. で初の日本人セールス・コンサルタントでもある。
通常のブローカーは限られた地域に限定して活動するが、刻々と変わるオークランドの広域市場を常に把握するコンサルタントであり続ける為に、あえてエリアを限定しないという厳しい課題を自身に課している。
丁寧で納得のいく説明とアフターフォローは、買い手からも売り手からも好評であり、彼女を頼るキーウィのクライアントも急増中。信頼度と期待感は更に厚くなっている。

このコラムへのご意見・ご感想をおまちしております。こちらまで>>