借家探しも大変だ
ワーキングホリデー、ロングステイ等を含んで、レント物件を探す方からのお問い合わせが増えています。
「私は売買の仲介がメインですので、賃貸はあまり力になれない・・・」とお断りしようにも、電話の向こうではかなり困り果てた様子が伺えます。その度に借家探しのツボを伝授していますが、借家探しも難航し長期化するとストレスと化しているようです。

賃貸物件の担当者は横柄?不親切???

賃貸物件を探している方からよく聞かれる感想です。 確かに、探し手側から観た場合、頷ける点もありますが、NZ流の借家の探し方を知っておくことも重要でだと思います。 以前、ある企業の方が上司の命令で賃貸物件についての市場調査に来られました。 私に向けられた質問は、NZでの賃貸物件を借りる場合のシステムや、しきたりについてでしたので、以下のアドバイスをさせて頂きました。

忠告1. NZにおいて、賃貸物件だけを取り扱った情報誌はない。
忠告2. 電話ではらちがあかない。あてにする方が間違い(?)
忠告3. 賃貸の担当者から、手取り足取り物件を紹介してもらう事は毛頭考えない事。
忠告4. 不動産代理店では住宅仲介と、賃貸仲介者はハッキリと二分されており、賃貸はプロパティマネジメント部門がその業務を行っている。そして、その担当者は各代理店に1名程度。売買を仲介するブローカーの数と比較して極端に少ない人数。
忠告5. 賃貸物件はその地域、地域の担当者と直接連絡を取らなければならない。つまり、横縦の繋がりがある住宅売買の仲介に対し、賃貸でのそれは存在しない。

彼はイエローページに掲載されているシティの不動産代理店に先ずは電話攻撃を開始したものの、効を奏さなかったそうですが、忠告2を受けて納得された様子でした。

彼の場合、上記の事情を把握が出来ていましたので、事前予測が効を奏し、カルチャーショックを受けることはなかったのと、賃貸物件を何が何でも探さなければならないという必要性がなかったので、めでたく上司からの命令という目的を果たし帰国されました。

不動産屋という概念が通用しないNZ

NZの不動産代理店のウインドウに飾られている写真は100%売り物件です。
こんな家を借りたいと代理店に入り、その家の担当者に「この家を借りたい」と頼んでも門前払いとなってしまいます。
「忠告4」にある通り、賃貸の担当者と売買のブローカーは全く別、また全ては担当個人ベースと考えて下さい。尚、担当個人ベースであるのは売買の仲介も同様です。

私自身、バーフート&トンプソンのメンバーではありますが、売買を仲介するブローカーの一人であって賃貸は専門外です。時折、○○支店の賃貸のA担当者と話したけれど、英語で説明された意味が分からなかったので、その意味を確認して欲しい等という依頼や、または、その間に入って下さいと懇願される場合もあるのですが、私は、通訳兼アドバイザーとして対応させて頂きますので、ご了承下さい。

賃貸の担当者もオフィスに居るとは限らない

因みに売買担当は日中、オフィスにいる確立はかなり低いです。
住宅売買のブローカーがそうであるように、賃貸の担当者も常時オフィスに居るとは限りません。また細かい伝言内容は本人に伝わる確立は低くなります。
確実に担当者と会いたければ、オフィスへ行く前に事前にアポを取って臨みましょう。

週末の賃貸探しは確立が低い

賃貸部門は土日に営業していません。従って、日中の時間をフルに使って動かなければなりません。

賃貸物件の探し方と契約手順・・・先ずは物件探し

住みたい地域にある、不動産代理店で賃貸物件のリストを受け取ることからスタートです。
シティに住みたいのなら、シティの代理店、パーネルならパーネルという様に、住みたいエリアの近隣代理店をしらみつぶしに訪問しましょう。同じ系列の他の支店の物件がオンライン上で検索してもらえるサービスやシステムはありません。 各店には近々空き家となる物件が黒板や一覧表になって用意されています。
また、NZヘラルド誌にも「to Let 」というタイトルで掲載されていますが、こちらは電話で住所を問い合わせる手間がかかります。

物件は通りから外観を眺めるだけに留める事

物件の所在地へは先ず、本人自らで行かなければなりません。担当者が対応するのは、それからです。 尚、その際の注意は賃貸物件のリストにも記載されてありますが、決してドアをノックしたり、敷地内に侵入することは許されません。
このルールを無視して、写真を撮ったり非常識な時間帯に家の周りをうろついたりしますと、トラブルの原因となりますから注意が必要です。

内見はそれから

場所も外観もよし、値段もよしとなれば、担当者に室内の見学を依頼します。
賃貸契約も住宅売買同様、双方の合意が成立して始めて契約書が締結できます。
つまり、借り手側が住みたいと願っても、大家さん(ランドロード)の意向に沿わなければ賃貸借契約は成り立ちません。
内見をして「ここでよし」となったならば、次は大家さんに自分をテナントとして選んでもらう番です。

ロングステイヤー、ワーキングホリデー、親子留学は大家さんに嫌われる?

NZに定職がなく、短期滞在用のビザの方が賃貸物件を探す場合、審査で取下げられる可能性は高くなります。
大家さんやプロパティマネジャー側からテナント候補の信用度を測る場合、最大の懸念材料は、テナント候補が果たしてキチンとルールを守り、家賃を支払える人かどうかです。
テナント候補が複数存在する場合、NZ現地に定期収入があり、その人が以前何処に住み、それを証明してくれる人(リファレンス)のレターがあると信用度が増します。その為、残念ながら外国人短期滞在者は不利なのが現状です。
よい物件には複数のテナント候補がいますから、申し込む前にそれなりの準備をしておかなければ後手にされてしまいます。 日本の銀行に幾らの預金があるとかは論外です。借りたい期間、家賃と生活費を賄う資金がNZの銀行に十分にある事も証明することの方が重要です。

地域 ベッド数 2004年10月〜2005年3月
最低 最高 平均
City Grafton 1 $260 $340 $313
2 $340 $460 $420
3 $380 $580 $504
4 $274 $411 $339
5+ $240 $260 $255
Parnell
Newmarket
1 $270 $350 $313
2 $420 $550 $473
3 $500 $650 $577
Takapuna 1 $225 $256 $240
2 $336 $417 $390
3 $550 $712 $680
Albany 1 $250 $285 $269
2 $280 $350 $307
3 $330 $400 $385
All $255 $350 $311
New Lynn 1 $220 $260 $235
2 $256 $328 $300
3 $332 $378 $355
All $225 $308 $263
NZの住居費は日本並みか日本以上?

NZの住宅価格の高騰ニュースは日本でも話題になりましたが、賃貸物件も同様に高いという事実は探し始めてから気がつくようです。
つい先週、ある方から親子3人で住める家を探している、大家さんの家の隣でもいいが、希望としてはタカプナ辺りで、家具付の3ベッドルーム、予算は週家賃300ドルという問合せがありました。NZ全体として考えても非現実的な値段です。
地域や物件のタイプにもよりますが、オークランド近郊であれば、相場として一室当たり、週200ドル以上を覚悟しなければなりません。
予算を出来る限り切り詰めたいというお考えも理解しますが、安い賃貸物件の殆どは最初から賃貸向けとして使われていますから、室内整備の面からも健康管理の面からあまりお薦めできる物件がないのが現状です。また、タカプナ周辺で300ドルの予算に見合うのはせいぜい2ベッド(家具なし)まで、物件の質は値段に反映するとご理解下さい。
ファミリータイプの物件(3ベッドルーム)であれば、週家賃350〜600ドルのレンジでしょうか。
詳しくはKoru World Servicesのニュージーランド不動産A to Z をご覧下さい。





ウィークリーマンションと日本人の大家さんが経営するフラット考

NZのウィークリーマンションとは、サービスアパートメントと呼ばれます。
一般の賃貸物件の契約は契約時に最短で3ヶ月、平均でも6ヶ月以上借りられる人が優先となるのに対し、最短一週間でも借りられ、リネン、家具、光熱費込みのサービスアパートメントは割高に思えますが、相対的に比較した場合、実際にはそれほど高くありませんし、値段は期間やシーズンによっては交渉可能です。
シティの物件であれば、1ベッドルームで週350〜500ドル程度です。カバン一つで即入居、その日から快適な生活が確約でき、サービスアパートメントであれば、クレジットカードでの支払いで決済できますから、利便性と居住環境を重視する方にはお薦めです。
サファイアサービスアパートメント
また、日本人オーナーの家の間借も選択肢として悪くありません。概して清潔ですから、快適なロングステイが出来るでしょう。
特に、ロングステイヤーの方は帰国の前夜まで住んでいても、ゴミの片付け、電話、電気代等の精算の煩わしさもありません。

日本人の好感度は下降気味?

ただ少し残念な事は、日本人に対する印象は比較的良いと言えたのは過去の事になってしまったようです。 現在では家賃を支払わずに逃げ出す中高年ロングステイヤーも登場、また大家さんの代理人になりすまし、昨年は多額の前家賃を搾取する詐欺事件には日本人も絡んでいました。旅の恥はかき捨て(?)的に日本では到底しないであろう行為でも外国という事で判断が狂ってしまうのは悲しい事です。
また、大家さんからは帰国したワーキングホリデーの人宛に届く裁判所からの封筒の量も年々増えているという嘆かわしいニュースも届いています。
尚、前述の中高年ですが、再発防止策として、こちらの信用調査機関に名前とパスポート番号、生年月日等の個人情報は通報されています。従って次回のロングステイで、賃貸物件を申し込む際は簡単に運ぶことはないでしょうし、彼らの日本の自宅には内容証明の書状も送られているのではないでしょうか。

会社等の事業所探しも同様

これからNZで起業される方や日本企業の担当者が上司の命令で事業所開設準備の為に先発隊として滞在されるケースも最近多いのですが、バックパッカー等を滞在先とし、連絡手段はプリペイドの携帯電話しかないペーパーカンパニー。 その会社とオフィスのリース契約をする大家さんは皆無と言えましょう。
外国人がオフィスを借りたいとひょっこり訪問してきたとして、住所不定、就労ビザなし(申請中)の外国人を相手にする不動産屋は日本とて皆無ではないでしょうか。
習慣やシステムは国によって異なるとも、借り手側もそれなりの認識と準備が必要なのはNZに限らず世界の共通項ですね。

2005年5月15日 記

著者紹介
そといし やよい
(Koru World Services 代表 NZプロパティコンサルタント 兼 仲介ブローカー REINZ正会員)

現在、最もアクティブなNZプロパティコンサルタント
ニュージーランド不動産を日本語で分かりやすく解説したウェブサイト「ニュージーランド不動産A to Z」の筆者。
オークランドの大手デベロッパーであるトニーテイグループの日本マーケット代表を務める傍ら、一般の不動産売買を行う仲介ブローカーとして、業界最大シェアを誇るBarfoot & Thompson Ltd. で初の日本人セールス・コンサルタントでもある。
通常のブローカーは限られた地域に限定して活動するが、刻々と変わるオークランドの広域市場を常に把握するコンサルタントであり続ける為に、あえてエリアを限定しないという厳しい課題を自身に課している。
丁寧で納得のいく説明とアフターフォローは、買い手からも売り手からも好評であり、彼女を頼るキーウィのクライアントも急増中。信頼度と期待感は更に厚くなっている。

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