そこが知りたい!ニュージーランド不動産 ニュージーランド不動産コンサルタント そといし やよい著

ニュージーランド不動産動向や最新情報を不動産コンサルタントがお伝えする コーナーです。
 
どうしようマイホーム 家を借りる場合について

ロングステイニーズの高まり、年金移民の台頭から、中長期の滞在を計画中の方から賃貸に関するお問合せが増えています。
しかしながらメールの質問内容は、私が掲載しているコンテンツ(ニュージーランド不動産A to Z)ではなく、実際にどの様な情報をご覧になってのお問合せなのか、受け手側としては判断できないのが現状です。
家賃相場、空室現況は一年を通じてかなり変わります。  サービスアパートメントやモーテルなら可能となる予約を、空室物件にも当てはめようと考えるのは非現実的と考えて下さい。 大家さんも不動産代理店の賃貸担当者も、今目の前の人を選びます。 
さて、それでは本題です。家を借りる立場側からの賃貸借法について解説致します。


賃貸借契約の基本部分を理解しよう

NZでの賃貸借契約はレジデンシャル・テナンシー・アクト(賃貸借法)が全てです。 
本アクトから逸脱する行為は一旦係争となった場合、貸し手側、借り手側双方が法律に準拠しているか否かが争点となります。 従って、契約や法律の説明になると拒絶反応を示される方は少なくありませんが、書面が始めに取り交わされている事、 それが守られている事がとても重要です。


住まいを借りる(貸す)行為に書面は不可欠

インターネットの掲示板や、無料広告には部屋貸し(フラットメイトやホームステイ募集)を含めて貸家(To Let)広告が溢れていますが、NZにおいて書面と金銭授受の記録は不可欠です。 そして書面とは云うまでもなく絶対に英語です。 たとえ貸し手と借り手、両者が日本人であっても、日本語による契約書は好ましいとは云えません。

年齢規定

賃貸借契約を締結できる年齢は18歳以上です。 婚姻をしたことにより成人と認められている場合はこの限りではありません。


貸家を探すコツ

貸家広告は大家さん本人が募集している場合と、正規不動産代理店(MREINZ)の賃貸担当者の2つのタイプですがその他、大家さんが第三者に募集と管理を依頼しているケースもあります。 貸家事情については「貸家探しも大変だ」でも触れていますので、ここで重複する内容は省略します。


家具の有無


家具がついている物件と、そうでない物件。 家具付きと記載されていても、付いている家具の内容はそれぞれです。 
尚、「家具付き(Furnished)」でも白物家電のみとベッドからダイニングテーブル、テレビ等を含む物件もあります。 しかしながらリネンや寝具の有無までは中を確認してみなければ分かりません。 
また、家具や電気製品にはレンタルもありますが、最短の契約期間は6ヶ月が殆どです。

借りる際にいくら必要か

NZの家賃は全て週単位の料金です。 GST(消費税)はかかりません。 家賃は通常2〜4週間分を一括で支払います。  一回の支払いに家主は4週間分以上を超える請求は出来ません。 賃貸契約に敷金(ボンド)の支払い義務がある場合、最大4週間分までを要求されます。 また、不動産代理店(MREINZ)の仲介を経由する場合には、更に手数料の1週間分とGST(外税)がかかります。
例えば、週家賃$300の賃貸契約に際して必要とされる準備金は次の通りです。

前家賃:($300x4週分) $1,200.00
敷 金:($300x4週分) $1,200.00
手数料: 1週間分+GST $337.50
合 計:  $1,737.50

支払いの際には、現金よりも銀行小切手またはパーソナルチェックが便利で安全です。 トラベラーズチェックや、クレジットカードでの支払いは不可となります。

金銭を支払う際には、必ず領収書を発行してもらおう

家主と思った人が、実は家主でもその代理人でもなかったという詐欺事件もあります。
NZの日常生活において、100ドル紙幣の流通、1,000ドルを超える現金(キャッシュ)の授受は慣用的ではありません。 小切手であれば、万一の際には追跡が可能となります。

敷金は政府機関のみが預かれる

現在の 賃貸借法 (テナンシーアクト)では家主またはその代理人が敷金を保留する事は認められていません。 そして敷金を受領した後、定められた期日以内に政府機関であるテナンシーサービスのボンドセンターへ預託する事が義務付けられています。 その責務を怠った家主は罰金が科せられます。 尚、敷金以外の請求も認められていません。 例えば、鍵の保証金、家具、芝刈り機の使用代金等、敷金以外の名目で請求することは出来ません。
従って、 敷金は契約時に家主または不動産代理店へ直接支払いますが、後にボンドセンターから受領した旨の書面が届きます。 この証書は後に返金を受ける際に重要となりますから、大事に保存しておきましょう。

水道代の取り扱いはメーターの有無で異なる

水道代は家の所有者に請求されます。 よって、家主から水道代の請求がなされる場合もありますが、実費精算であり、市役所よりの請求金額以上を要求されることはありません。また、水道代は独自の使用量がハッキリと分かるメーターを基準としてのみ請求されますので、1ヶ月幾らとかの定額請求はあり得ません。 一つのメーターを家主や2世帯以上がシェアする場合には、家主が負担することになります。 よって、シティアパートメント等を借りる場合、実質的には家主側の負担となり、全て家賃に含まれています。
水道代の有無も契約書上にキチンと明記されている事が不可欠で、 契約書にメーターの数値を記入した分からのスタートとなります。 尚、電気代、ガス代は借り手側が供給会社と直接契約しなければなりません。 新規顧客となる場合には、保証人、保証金を要求される場合があります。

契約期間は2通り

賃貸期間を特に定めない方式と期間を定める方式のみです。 前者の場合、借り手側は3週間前に契約解除通告を書面で行うことにより、契約解除が行えますが、後者の場合、契約期間前に契約解除を申し出ることは出来ません。 

最低賃貸期間を設定した後、何かの事情により期間前に契約解除を行いたい場合には、家主との協議が必要ですが、通常は最終期日までの家賃をペナルティとして請求されます。

不動産代理店が仲介する場合、120日以内は短期と定義され、最短契約期間として現在では90日以上の契約を求められるのが一般的です。


家賃の支払い

家賃は例外なく、前払いです。 これは借り手の義務ですから、必ず守りましょう。
通常、一回の支払いは2〜4週間分ですが、前述の通り4週間分以上の前家賃を請求することは賃貸法で認められていません。 家賃の支払いは銀行の自動引き落としが一般的ですが、それ以外は必ず領収証の発行を受けて下さい。

家賃の改定について

家主が家賃を値上げする場合にも、書面による60日前通告が義務付けられています。
従って、家賃の値上げ通告を受けた後、不服であれば期日以内に移転場所を探さなければなりません。 賃貸期間を定める利点は、契約期間中の家賃高騰を防げることにあります。 また、最初の賃貸借契約締結日から180日以内、また前回の値上げから180日以内の再値上げ要求は違法とされます。

借り手側の責任と義務

1.家賃を決まった日時までにキチンと支払う事
2.室内外共、常識的範囲内で整理整頓を心がけ、きれいに住む事
3.周辺住民は勿論、他人に迷惑となる行為は行わない事
4.家主の許可を得ない、居住目的以外での使用は行わない事
5.破損や修理が必要となった場合は、速やかに家主へ届け出る事
6.家主に無断で鍵の交換、室内の模様替え及び改築、改造を行ってはいけない。
  (例えば、ガレージに改良を加えて、簡易キッチンを作り、ベッドルームとして使用する等)
7.その他一切の違法行為
8.定員を超える人数の居住と、契約名義人以外の居住の禁止


同居人に対する取扱い


フラットメイトが一般的なニュージーランドですが、家主との契約上で同居人を入れる事が許可されていない場合、必ず家主の同意を得ることが鉄則です。 
時折、家主と契約した借り手は既に退去していながら、残ったフラットメイトが勝手に居住しているケースもありますが、敷金の返済要求は望めないだけでなく、家主側から即刻退去命令が下される場合もあります。

連帯で契約する場合

仲のよい友人やクラスメート同士で賃貸契約を締結する際にも注意が必要です。
例えば、借り手同士で家賃を折半する約束をしておきながらも、その相手が家賃を滞納してしまう場合、契約内容の如何ではあなたも責任を負うことになります。

ペットは嫌われる?

シティアパートメント等、集合住宅の殆どは管理組合規定でペットが禁止されていますが、一般住宅でもペットは殆ど歓迎されません。 特に犬は市役所の条例も手伝いますから、猫はOKでも犬はダメというケースが殆どです。 家主に隠れてペットを飼う行為も発覚して裁判になった場合、不利になりますから慎みたいですね。

室内禁煙が常識のニュージーランド

禁煙とは、訪問者も含まれます。 
脅かす訳ではありませんが、ちょっとなら分からないと室内で喫煙し、防火装置が作動、消防車が出動する事態になることも密集性の高いテラスハウスやアパートではあり得ます。 NZでは火災ではない場合に消防車を出動させてしまった場合、その費用の請求をされる事もあり、その弁済費用は4桁数字です。

家主への対応

NZでは賃貸借期間中、半年に一度程度の点検が慣用的に行われます。
契約期間中に緊急以外、無断で室内に立ち入られることはありませんが、48時間の事前通告(書面による)があれば拒むことは出来ません。 但し、室内の立ち入りは常識範囲内の時間(午前8時〜午後7時)ですから、深夜突然というケースはありません。
また、賃貸期間中に家主は売却する場合もあり、売却期間中には第三者(不動産代理店のブローカー、購入希望者)の立ち入りを要求されることもありますが、借り手側はそれを拒む事はできません。 様々な事情や要望は家主と話し合うことが求められます。

契約解除について

転居する場合にも、書面による契約解除通告が必要となります。 口頭での契約解除は有効ではありません。 書面の日から21日後が最短の契約終了日となります。
尚、家主側からの申し出の場合は90日ないし、42日の事前通告(書面)。 解除理由によって期日は異なります。

退去時

電気ガス料金の精算は退去時と最終日の検針を同時にすることは不可能ですから、ライフラインの契約解除は余裕を見て、最終日の2週間前に行う必要があります。
次の転居先が分かっている場合には、その旨を告げ、日本へ帰国してしまう場合には、概算での請求(多め)に応じ、後日残金の清算となりますので、コーディネイターを依頼するか、帰国までの数日間はホテルへ移動する必要があるでしょう

また云うまでもありませんが退去時には、室内清掃と全てのゴミ処理を行う事が必要です。 

全てが契約当初の状態に戻った後、不動産代理店の物件管理者の立会いを行い、鍵の返還と共に全ての契約が終了することになります。
敷金の返金はその作業が終了した後となりますが、敷金の返還要求は両者のサインが入った書類をボンドセンターへ送り、銀行口座への入金を受けます。
また、次の転居先でも敷金を要求されている場合には、名義人の変更手続きのみとなり、過不足分のみだけの返還、或いは支払いとなります。

問題が発生した時の対応

問題が発生した場合には、当事者同士での話し合いが不可欠ですが、解決の糸口が見出せない場合には、メディエーション(仲裁)を経てトライビューナル(簡易裁判)の裁定を受けることになります。
家主、借主双方が一方的な主張でお互いの義務を反故にすることは出来ません。
例えば、家主がある修理に応じてくれない事を理由に、家賃の支払いを止めたり、金額の一部を修理代の名目で減額したりすることは認められません。
簡易裁判で一方的な行為と認められた場合、状況によっては不利な審判が下される事もあるでしょう。

仲裁を申し込む場合ですが、必ず書面と共に、申請料20ドルを納付します。 申請から約2週間で連絡があるでしょう。 申請料は一旦納入されますと、仲裁前に問題が両者の間で解決されても返金されません。 また、申請料の納付は仲裁結果の如何に係わらず、申請者が負担することになっています。 
仲裁に立ち会う人は裁判官ではなく、あくまでも中立な立場の聞き手役でしかありませんが、トライビューナルで宣告は裁判官の判決と同様の法的効力を持ちます。

これまでに寄せられた質問から

1. ホームステイ環境

ホームステイには宿泊だけでなく、食事代、洗濯代、学校への送迎等々、様々な要素が料金の中に含まれています。ホームステイの内容に不満がある場合には先ず、ホストファミリーにその旨を伝え、話し合う姿勢が大切ですが、ホームステイプログラム等でサポート会社から斡旋を受けている場合には、業者にも話し合いに加わってもらいましょう。 ホームステイもNZでは立派なビジネスです。 業者を通じて2週間以上のステイ代を日本から一括で支払い、解約不能と言われていても実質的に解約は可能です。 
但し、ホームステイは現在の賃貸借法の適用外とされています。 しかしながら、行政側もある範囲内で賃貸借法適用に向けての検討が進めていますし、実務上でも仲裁事例があります。
業者を通じてホームステイの手配を依頼する場合には、ステイ代と手配代を明瞭にしてもらうこともポイントです。 

2. 説明と現状が違っていた例
電話回線は1日で開設できると、仲介者から説明を受けて入居した新築アパート。 しかしながら実際には、電話回線を引き込めないアパートだったそうです。 英語が苦手な為に契約書を読まずにサインしてしまった例ですが、半年先まで契約解除が出来ないと家主から言われて困っているという相談です。 早期の契約解除については家主との話し合い次第となりますが、支払った仲介手数料の返金を求める場合には、業者との話し合いが必要となります。



Koru World Services では賃貸契約を締結される際のアシスタンス、通訳、仲裁、簡易裁判等の対応策について有料アドバイスを申し受けております。 メールでの相談は受け付けておりません。 先ずはお電話でご相談下さい。

お問い合わせ:09−444−9060


追伸: リンクミー内でブログを開設しました。
 
2006年1月16日 記
 

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著者紹介
そといし やよい
(Koru World Services 代表 NZプロパティコンサルタント 兼 仲介ブローカー REINZ正会員)

現在、最もアクティブなNZプロパティコンサルタント
ニュージーランド不動産を日本語で分かりやすく解説したウェブサイト「ニュージーランド不動産A to Z」の筆者。
オークランドの大手デベロッパーであるトニーテイグループの日本マーケット代表を務める傍ら、一般の不動産売買を行う仲介ブローカーとして、業界最大シェアを誇るBarfoot & Thompson Ltd. で初の日本人セールス・コンサルタントでもある。
通常のブローカーは限られた地域に限定して活動するが、刻々と変わるオークランドの広域市場を常に把握するコンサルタントであり続ける為に、あえてエリアを限定しないという厳しい課題を自身に課している。
丁寧で納得のいく説明とアフターフォローは、買い手からも売り手からも好評であり、彼女を頼るキーウィのクライアントも急増中。信頼度と期待感は更に厚くなっている。