●高金利時代の不動産投資
 シティの需要と供給に焦点を置き、現在のマーケット及び今後の展開を
 想定しながら「元本保証型の不動産投資」を考察する

NZの金利は高止まり状態…

10月28日リザーブバンクは今年6度目の利上げを発表した。
銀行の定期預金だけでも金利がつくのであるから、なにもリスクを背負って不動産投資をすることもないという考えも一理。
それも一つの考え方であるが、現金資産だけに偏っていては節税メリットが生まれない事はお分かり頂けたと思う。

前回2回シリーズで、テーマ「借金しよう」編では不動産購入のメリットの実例を数例示したが、今回のテーマに移る前に前回までのまとめをしよう。
不動産所有から派生するメリット

不動産は現金資産とは異なった性質や可能性を秘めている。見逃せない点は、建物は勿論、調度品に対する減価償却、継続的に発生する家賃収入(インカムゲイン)であり、売却する際に期待できる売却益(キャピタルゲイン)である。
左のグラフは同じ予算を定期預金で運用した場合と、同額を不動産投資の資金としてホテルユニットを所有して、10年間の固定家賃(8%)を前提に計算した場合の収益予想である。日本の不動産と比較してNZ不動産が異なる点は、買ったその日から評価価格が下がる日本の実情に対し、NZの現状は必ずしも当てはまらない。


賃貸需要を検証しよう

1.マーケット展望


不動産投資の入口としてターゲットとなるのはやはり、前回の「マスタープラン・ルール6」にもあるように、利回りもよく、賃貸需要のあるオークランドのCBD(Central Business District)と呼ばれる中心地。
CBD地区(通称ダウンタウン)は数年前まで休日や夜になるとゴーストタウンと云っても過言ではなく、昼間と夜間人口の推移は激しかった。
車の移動が殆どである私だが、ダウンタウンではタウンウォッチングを兼ね車は使わず移動は徒歩と決めている。ここ数年ダウンタウンを歩いていて感じる事は、通行人と袖すり遭う回数が増えたことである。また、夜10以降や深夜の人通りも増えた事は大きな変化ではないだろうか。CBDの夜間人口が確実に増加している一つの現象と捉えてよい。その証拠にシティには深夜営業する大手スーパーマーケットは5年前には皆無であったが、今や2店舗となった。。


2.CBDに住む人はどんな人?

余談になるが、オークランドの人口流動を日本(東京)のそれと比較してみよう。
郊外に一戸建ての家を求め、通勤地獄覚悟に都会を離れて行ったのは昔の東京サラリーマンであった。日本の場合は新幹線通勤も認められ、単身赴任の場合には補助などが支給されるので都会から郊外への人口異動に拍車がかかった。
その夜間人口が減少の一途であった東京だが、数年前から人口は増加、都市回帰現象がみられるようになった。その背景は都会の方がインフラ整備されており、行きたい場所へもバスや電車を使い、徒歩圏内で何でも欲しい物が手に入ると高齢者が再び都会暮らしを選び始めた事が起因しているという。

それに対し、ダウンタウンには今まで居住用スペースが極端に少なかった。つまり、生活空間は必然的にCBD圏外に求めていたのである。ニュージーランドでは通勤手当などはなく、バス代も100%自己負担であり、マイカー通勤であれば駐車場代も自己負担となる。シティカウンシル当局は市全体の再生と都市の肥大化対応策としてブリトマート計画を策定、交通渋滞緩和のため公共交通機関網の整備を推進させている。
しかしながら利用者側にとっては、バスルートは住宅地を巡回することで所要時間も多く、市の計画は歓迎されていない。渋滞に遭遇する事を考えると、CBDに通勤するサラリーマンは通勤時間の増大が余儀なくされている。

通勤時間を増大は当然としてもバス代も自己負担、住まいを遠くへ求めても、住宅の値段は決して安くならない・・・
これらの背景から、職住接近型の生活スタイルに切り換え、CBDを生活拠点とするファーストホームバイヤーが増えだした。需要があるロケーションなら売却も容易と考える思惑も働いているのだろう。
郊外の一戸建ての家に住み、休日には芝刈りや日曜大工に精を出す、典型的なキーウィ・ライフスタイルを夢見たところで、現実的にはオークランドの肥大化に伴い、アーバンライフへの憧れに変わりつつある。また郊外であっても新しく開発される住宅は小さくなるいっぽう。広い居住スペースと求め郊外へ移ろうと思っても、予算内で買える家の広さは思惑ほど確保できない。とするならば、郊外へ移る意味は薄らいでしまう。時代の流れでもあろう。都市回帰現象のオークランド版ではないだろうか。

また、CBDの夜間人口には観光客や留学生等の短期滞在者もかなり含まれる。彼らを短中期滞在者と定義しよう。星の数を競うホテルに長期滞在する観光客は少ない。そんな彼らはエコノミータイプのホテルを求めるのだが、現在その数は大変少なく、バックパッカーとフラッティング形式の共同生活がそのニーズを補っているのが現状である。
語学学校もCBDに集中しており、多少家賃は割高であっても通学にバス代を支出する必要がなく、留学生にとっても滞在総経費はCBD圏外に住むのはかえって割高か、同じになってしまい、CBD密着型の滞在スタイルに注目が集まっている。新規のバックパッカーが数件オープンしたのも短中期滞在者用の居住空間不足が起因している。


3. 居住空間の増加はレントニーズの多様化に対応しうるか


世論の批判が強まりステュディオに代表される小さなユニットの台頭にシティカウンシルも憂慮を示しているがユニットの最小面積等の規定はまだ制定されていない。
しかしながら対投資効果のみで比較する限りにおいてステュディオに軍配が上がる事は無視できない。一方需要とは反対に世論からは嫌われる面があるのも、また事実。
最近の入居者の推移データからも、小さくともプライバシーのある空間を求める傾向が現れており、ステュディオの賃貸需要は引き続き堅調であることが伺える。
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06.12.2004 掲載

著者紹介
そといし やよい
(Koru World Services 代表 NZプロパティコンサルタント 兼 仲介ブローカー REINZ正会員)

現在、最もアクティブなNZプロパティコンサルタント
ニュージーランド不動産を日本語で分かりやすく解説したウェブサイト「ニュージーランド不動産A to Z」の筆者。
オークランドの大手デベロッパーであるトニーテイグループの日本マーケット代表を務める傍ら、一般の不動産売買を行う仲介ブローカーとして、業界最大シェアを誇るBarfoot & Thompson Ltd. で初の日本人セールス・コンサルタントでもある。
通常のブローカーは限られた地域に限定して活動するが、刻々と変わるオークランドの広域市場を常に把握するコンサルタントであり続ける為に、あえてエリアを限定しないという厳しい課題を自身に課している。
丁寧で納得のいく説明とアフターフォローは、買い手からも売り手からも好評であり、彼女を頼るキーウィのクライアントも急増中。信頼度と期待感は更に厚くなっている。

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